「道徳の時間」学習指導案

                                                        指導者 藤 野 賢 二
                                                              平 田 洋 一

1.日 時
  平成17年 9月20日(火)
  第6校時

2.学 年  
  第3学年A組
  (男子15名 女子14名 計29名)

3.主題名
  人間としての生きる喜び 3−(3)

4.ねらい
 人間の心の弱さや醜さを自分の問題として捉え,それを克服する強さや気高さがあることに気づかせ,人間としての生きる喜びの大切さを自覚させる。

5.資料名  償い (詩)

6.主題設定の理由
(1)主題観
  中学生の時期は,人間が困難に直面したとき,それを克服する強さや気高さを持つと共に,弱さや醜さも同時にもっていることを理解できるようになってきている。そこでこのような時期を捉え,ありのままの人間の姿を率直に受け止め,共感的に理解し,温かい態度で接することの大切さを考えさせたい。前向きで誠実に生きる人間の姿に接することで,人間としての生きる喜びを味わわせることができる。

(2)生徒観
 人間が生きていくためには,自ら考え,判断し,実行し,自分の行為の結果に責任をもち,自己の生き方に誇りをもって生きて行くことが必要である。誰しも過ちを犯してしまうものである。過ちを犯してしまったと認識したときどう対処するかで,その人の価値が決まってくる。
 本学級の生徒は,明るく活発な生徒が多い。反面,思慮深さに欠け,相手を傷つける言動もみられる。そこで,本資料「償い」に出てくる登場人物の行為から,ありのままの人間の姿を受け止め,共感的に理解し,犯してしまった過ちを償う努力の大切さについて考えさせたいと思う。また,過ちを過ちとして認め合うなかから相手を尊重し,クラスの目標でもある真の友情を築かせたい。

(3)指導観
  本資料は,交通事故の加害者になった「ゆうちゃん」を友人の立場で歌い上げた,さだまさしの曲である。被害者と加害者の思いと命の尊さ,罪を犯すことの重さ,誠実に前向きに生きる人間としての在り方など考えさせられる内容が多く含まれている。ここでは,人間の優しさと温かさを感じ,人間の弱さ・醜さを克服して生きていく「ゆうちゃん」の生き方に視点を当て,誇りと希望をもって生きる大切さを感じさせたい。

7.準備物 
 ノートパソコン ビデオプロジェクター ワークシート

8.指導過程

学習活動

発問と生徒の反応

T1

T2

留意点


@
資料から,判決後も反省が見られない少年二人を諭すため,裁判官が紹介した歌について


○平成13年に起こった19歳の少年2人が引き起こした傷害致死事件とその裁判の結果を知らせ,この事件の二人の態度に対し裁判官が紹介した「償い」という歌に焦点をあてていく。

支援

説明


○少年事件の判決文をパワーポイントで示し,T2が事件の概要を説明する。

○裁判において裁判長がこのような話をするのは異例なことで話題にもなった。

指導過程


A資料前半を読む

B設問1ゆうちゃんの心の内を考える






C設問2
 ゆうちゃんの心の内を考える                




          D設問3
 手紙の中身を考える




          E設問4
 ゆうちゃんを見守る筆者の気持ちを自分の気持ちと重ね合わせ考える


○資料前半を教師が読む。

○「人殺し,あんたを許さない」とののしられ被害者の奥さんの足下で泣きながら頭を床にこすりつける「ゆうちゃん」の心の内は,どんなだろう。

・謝ること以外何もできない

・何と言われようと仕方ない

・取り返しのつかないことをしてしまった

○月末になると,薄い給料袋の封も切らず郵便局に行く「ゆうちゃん」の心の内は,どんなだろうか。

・少しでも償いをしたい

・自分にできることはこれくらいしかない

・自分を追い込むことが少しでも罪の償いになればいい

○「ゆうちゃん」に届いた奥さんからの手紙には、どんなことが書かれてあっただろう。

・もうやめてほしい(許す?許さない?)

・気持ちは、わかりました

◎筆者がもらい泣きの涙が止まらなかったのは,2人のどんな姿に心を打たれたからなんだろう?

・傷つきながらも互いを思いやる2人の姿に心を打たれた。

・傷つけあいながらも互いに前に進もうとしている姿に感動した。


範読
   発問

 

 

 

発問

 

 

 


発問

発問


支援

板書

 

  

 


板書


○資料「償い」の前半を配布

○大切な人の命を奪われた奥さんの気持ちに共感させる。

【キーワード】
 大声で泣きながら床にこすりつける



○送金を続けるゆうちゃんの気持ちを考えさせる

【キーワード】
 何もかも忘れて働いて


○ゆうちゃんと奥さん二人ともが苦しみながら前向きに生きていこうとしている姿に気づかせる。【ゆうちゃんの罪は,許されたのか】

 

○人と人が関わり合うなか,お互いが傷つけあったり支え合ったりしている。ゆうちゃん,奥さんの二人の優しさ温かさに感動した筆者の姿を気づかせる

○「人間って哀しいね」とあるけれど,哀しさの向こうに人間のすばらしさも見えてくるはず。

Fまとめ

○導入で話した少年二人のその後と,この裁判に関わってこの詩の作者のさだまさしさんのコメントを紹介し,最後に「償い」を最初から最後まで通してきく。

支援

○曲は,音楽と絵本をパワーポイントで掲示する。

     償 い          作詩・作曲:さだまさし

 月末になると ゆうちゃんは薄い給料袋の封も切らずに
 必ず横町の角にある郵便局へとび込んでゆくのだった
 仲間はそんな彼をみてみんな貯金が趣味のしみったれた奴だと
 飲んだ勢いで嘲笑っても ゆうちゃんはニコニコ笑うばかり

 僕だけが知っているのだ 彼はここへ来る前にたった一度だけ
 たった一度だけ哀しい誤ちを犯してしまったのだ
 配達帰りの雨の夜 横断歩道の人影に
 ブレーキが間にあわなかった 彼はその日とても疲れてた

  人殺し あんたを許さないと 彼をののしった
  被害者の奥さんの涙の足元で
  彼はひたすら大声で泣き乍ら
  ただ頭を床にこすりつけるだけだった
 
  それから彼は人が変わった 何もかも
  忘れて 働いて 働いて
  償いきれるはずもないが せめてもと
  毎月あの人に仕送りをしている

 今日ゆうちゃんが僕の部屋へ 泣き乍ら走り込んで来た
 しゃくりあげ乍ら 彼は一通の手紙を抱きしめていた
 それは事件から数えてようやく七年目に初めて
 あの奥さんから初めて彼宛に届いた便り

 「ありがとう あなたの優しい気持ちは とてもよくわかりました
  だから どうぞ送金はやめて下さい あなたの文字を見る度に
  主人を思い出して辛いのです あなたの気持ちはわかるけど
  それよりどうかもう あなたご自身の人生をもとに戻してあげて欲しい」
 
  手紙の中身はどうでもよかった それよりも
  償いきれるはずもない あの人から
  返事が来たのが ありがたくて ありがたくて
  ありがたくて ありがたくて ありがたくて
 
  神様って 思わず僕は叫んでいた
  彼は許されたと思っていいのですか
  来月も郵便局へ通うはずの
  やさしい人を許してくれて ありがとう
 
  人間って哀しいね だってみんなやさしい
  それが傷つけあって かばいあって
  何だかもらい泣きの涙が とまらなくて
  とまらなくて とまらなくて とまらなくて